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「eternity Calling」
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 B5/ページ数未定 表紙 カラー/本文 スミ1色
 「ONE 輝く季節へ(Tactics))」長森 瑞佳の小説
 text and edit by 成瀬 尚登 / illustration by 不知火 菱
 即売会価格 500円
※「Calling」を翻案して書かれた作品です。

[履歴]

 2001年08月12日(Comic Market 60) 初版発行

 2001年10月28日(Comic Revolution 30) 第二版発行
  ・語句表現の修正、誤字脱字の修正


【本文紹介】

「……ずっと、こうしていられたらいいな」
 瞳を閉じて、少女はうれしそうにそう言った。幸福感に満ちている貌だった。
 その貌を見て、浩平は無碍に払うことができなくなってしまった。
 恥ずかしさに耐えて、対面の信号が青になるのを心の中で急かした。
 やがて、人の群が動き出す。
 少女が頭を離したのを確かめて、浩平は歩き出した。
 歩き出して、なおも空を見上げる。
 赤い影がたなびく雲に落ちていた。
 いつになく、それは赤く見えた。
 その中に吸い込まれていくのではないか……そんな漠然とした不安に、浩平は急に襲われた。
 雑踏に紛れたまま、みずからの存在が希薄になっていくような、そんなとりとめのない不安だ。
 すると、不意に浩平の手がぎゅっと強く握られた。
 少女の手だった。離れないと意志がそこにこめられているように感じられた。
 だから、浩平はその手を握り返した。
 横断歩道を渡り切り、人混みから抜け出す。
 振り返ると、恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、うれしそうに浩平を見つめている少女がそこにいた。

 髪を撫でる。たまらなく愛おしいと思うから、こうしている。
 こんな時がずっと続けばいい。愛していることが幸せなのだとしたら、ずっと愛していればずっと幸せでいられるかもしれない。
 そう思ったその時、浩平の中で、何か冷たいものが身体に浸みてくるような気がした。
 この少女を愛することは、ずっとできるかもしれない。
 だが、この少女は永遠ではない。
 その時、自分は、悲しい死を、また見なければならないのだろうか。
 浩平は、手を止めた。
 自分の存在が先に消える保証がなければ、自分は必ず悲しい死を見なければならない。それは、起こりうる可能性をもった未来ではなく、確実に起きる将来の現実だ。
 空恐ろしさを感じて、浩平は眠れる少女の背中を抱きしめた。
 肌を触れ合い、心の底からわき上がる歓喜を共有できたと思ったのに、それはそれだけのことでしかなかったのだ。
 こうして一つになっても、やはり、ここにいる少女は、自分にとって他人でしかない。
 この少女も、自分と同じように、自分が先に消えたら、悲しい死を見つめるのだろうか。
 そう思うと、浩平は胸をかきむしりたくなるような焦燥を感じた。
 それは、絶望と言い換えてもいいものだった。

 少女がいた。いつからいたのかわからない。
 少女はじっと浩平を見ていた。同情でも、皮肉でもない。そこにいて浩平を見ているのが当然という顔をしていた。
「泣かないで。わたしが、いてあげるよ、えいえんに」
 鏡を感じた。浩平の感情をそのまま映してくれる鏡のように思えた。それは透き通っていて、手を伸ばしてもつかめないような、そんな不思議な存在感があった。
「えいえんなものなんか、あるわけがない。みんな消えていくんだ。それをただ悲しいと思って見送るしかないんだ!」
「そうだよ、えいえんなものななんて、あるわけないんだもん。でも……」
 そして、少女は言った。
「えいえんは、あるよ」
 少女はそう言った。まるで、それを浩平が求めているというように、その顔は悲しいほどに優しかった。



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