かせりゆめ やみのうつつ 改訂版 表紙

「かせりゆめ やみのうつつ 改訂版」

 B5/44ページ/表紙 モノクロ・特殊紙 /本文 スミ1色
 「With You 〜みつめていたい〜 (F&C)」乃絵美の小説
 text and edit by 成瀬 尚登 / illustration by h
 即売会価格 400円

[履歴]

 2001年 2月12日(Little Lover) 発行
  ・表紙・挿絵をすべて差し替え、絵師の変更
  ・「Lunatic Butterfly」の後半を、より濃厚な方向へリライト。
  ・表紙の装丁の大幅な変更
  ・「Fruits Assorted」「Lunatic Butterfly」の文章表現の改訂
  ・その他、文章表現、誤字脱字の修正

【本文紹介】

「……お兄ちゃん……」
 その唇は、桃色に淡く輝いていた。
 吐息……ずっと感じていた芳香、それは乃絵美の身体がただよわせる桃の甘美な香りだった。
「お兄ちゃん……」
 艶やかに輝く唇が、もう一度、熱っぽく言葉を放つ。
 その口許に、正樹は軽い酩酊感を味わった。
 乃絵美が立ち上がる。
 そして、しだれかかるように、正樹の胸に顔を埋めてきた。
 はっとして、正樹は乃絵美の華奢な肩をつかみ、その身体を引きはがす。
 だが、次の瞬間、正樹の身体から、力が抜けた。
 がくっと体勢を崩し、前のめりになりながら床に手をついて、呆然と乃絵美を見上げる。
 乃絵美のその瞳は、愛おしそうに正樹を包んでいた。
(「Perfumed Nightmare」)

☆

「だめ……手は使っちゃだめなの……」
 潤んだ瞳で、なおも乃絵美は正樹の手を拒む。
「でも、そろそろパフェも飽きたしな……」
 そう言いかけ、正樹はあることを思い付いた。
「じゃあ、ハニーレモンパイをもらおうかな」
「……はい」
 乃絵美はおずおずとテーブルの上に腰掛けた。
(「Fruits Assorted」)

☆

「どうして、そんな格好……」
 呆然として、正樹は乃絵美の貌を見返す。
 乃絵美は恥ずかしそうに言った。
「二人でいるときはこうしていろって言ったのは、お兄ちゃんだよ」
「えっ……」
 声を出して驚き、正樹はふたたび絶句した。
 すると、乃絵美の表情に急に陰がさした。伏せた瞳、その優美なまつげが震えはじめた。
「約束したのに……おぼえてないの、お兄ちゃん……?」
「乃絵美……」
 胸が締め付けられるような思いを感じて、正樹はどうしていいかわからず、とまどうだけだった。
 乃絵美は顔を上げた。
「そんなこと、ないよね。約束、まもってくれるよね、お兄ちゃん」
 潤んだ瞳で、乃絵美は正樹に迫った。
「お兄ちゃん」
 優しく、熱っぽい声で、乃絵美は正樹を求めた。
 そして、正樹はうなずいた。
 いまだにどうしていいのかわからないまま、何物かに衝き動かされるままに、うなずいたのだった。
(「Lunatic Butterfly style Deeper」)



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