eternity Alone 表紙

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「eternity Alone」
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 B5/56ページ 表紙 カラー/本文 スミ1色
 「ONE 輝く季節へ(Tactics))」川名 みさきの小説
 text and edit by 成瀬 尚登 / illustration by 不知火 菱
 即売会価格 500円
「Liar! Liar!」のリメイクです。

[履歴]

 2001年 5月13日(Comic Revolution 29) 初版発行

 2001年 8月12日(Comic Market60) 第二版発行
  ・文章表現、誤字脱字の修正

 2001年10月28日(Comic revolution 30) 第三版発行
  ・文章表現、誤字脱字の修正


【本文紹介】

「……こんにちは」
 その声は、風に乗って届いた。
 振り返ると、向こうの柵のそばに立っていた少女が、微笑んでこちらを向いていた。
 しとやかな笑みだ。
「あ、やあ……」
 そう応えながら、浩平は記憶の中からその微笑みの持ち主を探しはじめた。初対面の少女に、こんなにもしとやかな笑みを向けられる理由は見あたらない。しかし一方で、あてはまる少女も一向に見あたらない。
 そうして浩平がとまどっていると、少女は屈託のない瞳を向けてきた。
「夕焼けを見ていたんだよね」
 ああ……と、浩平は応える。
 少女はふふっと笑って言った。
「夕焼け、綺麗かな?」
「夕焼け?」
「うん、夕焼け。点数をつけるなら、何点くらいかな?」
「そうだな……」
 浩平はあらためて空を見上げた。
 夕焼けに点数などつけたことなど、これまでに一度もない。そもそも、夕焼けに点数をつけるという行為の意味がわからない。
 だが、少女の微笑の持つ雰囲気に、浩平はおのずと素直な気持ちになった。
「……55点」
「ふうん……結構、辛口なんだね」
 少女は期待がはずれたというように、少し残念な顔を見せた。

「手を出して、浩平君」
 それをさりげなく流して、みさきは浩平をうながした。
 浩平はみさきの前に手を差し出す。
 みさきは自分の右手を左胸に当てた。そして、何かをすくいあげるような動作をして手を前にかざした。
 左手を伸ばして浩平の手を探る。
 それをつかんで引き寄せ、みさきは右手を浩平の手に重ねた。
「私の心を、浩平君に、あげるよ」
 しとやかな笑みでみさきはそう言った。
 浩平は重なっている手を凝視した。みさきの肌のやわらかさとぬくもりが手のひらを通じて直に伝わってくる。それは、まるで、みさきの心そのものが、手のひらを通じて浩平の心に流れ込んでくるように感じられた。
「こんな大事なもの……」
 浩平は息を飲んだ。その言葉の重さに押しつぶされそうな気がして、そうつぶやくのが精一杯だった。
「こんな大事なもの、俺はもらえないよ」
 すると、みさきはふふふと笑った。
「おまじないだよ。浩平君とこれからもずっと一緒にいられますようにって」

 時間……卒業するまでの時間。あとは削られていくだけで、決して増えることのない時間。
 みさきは、そういう時間の中で、生きている。
 その時間が終われば、みさきは現実のものとなった絶望の中に帰るしかない。
 どうにかしたい、だが、どうにもできない。
 みさきのそばにいたいという想いが強ければ強いほど、それを跳ね返す強大な力によってかえって無力感と挫折感を味わわされる。
 孤独である、そういう寂しさだけが感じられた。
 その想いをどうすることもできない無力な自分を腹立たしい存在と感じずにはいられなかった。

「俺は、先輩と同じ気持ちになれたんだよ」



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