……カランコロン……
時計台の鐘が聞こえてきた。
無駄だと思いながら、そして、あきらめきれずに、腕時計をみた。
6時……。
僕はややうつむいて手をポケットに戻した。
あの時の約束……時計台の鐘が鳴るまでにここに来てくれと、あのとき、ユリカはそう言って去っていった。
限界状況……生きていく上で、自分の力でもどうにもならないこと。
それをわかっていて、それでも彼女を行かせてしまった自分を、僕はずっと許せなかった。
そして、今も……。
僕は空を見上げた。
ちらちらと白い雪が降りてきた。
これが……ユリカの気持ちなのだろうか……
雑踏の中で、僕は顔を上げることができなかった。
あ……。
はっとして僕は顔をあげた。
遠くから、誰かが駈けてくる。
それはユリカだった。
彼女は僕の前に走り寄り、白い息を弾ませ……。
僕は、ユリカを、思い切り抱きしめた。
「アキト……アキト……」
彼女は僕の胸の中で泣きはじめた。
「ごめんね、遅くなって……もう、会えないかと思って、それで……」
「いいんだ……いいんだよ……ありがとう」
……純白の雪。何色にも染まっていない色。
ユリカさえゆるしてくれるのなら、僕はそれ以外、何もいらない