おや……?
夕方の帰り道、僕は通りで足を止めた。
向こうのケーキ屋の前にいるミニスカートのサンタ、ルリちゃんじゃないか?
ちょっと意外だな……。
僕は好奇心のおもむくまま、ケーキ屋に向かった。
「……ケーキいかがですかぁ……あっ」
ルリちゃんが僕に気づく。
バツの悪い顔をしている。
……なんか、まずいとこに来たのかな。
「アキトさん……」
「バイトなんだ」
僕は笑顔で言った。すこし、ルリちゃんの顔が和らぐ。
「はい」
しかし、見るからに寒そうだな……白い太ももに血管が浮いてるよ。
「寒くないかい? 今日は雪が降るって言ってたよ」
「でも、あと1時間ですから」
ルリちゃんのその言葉は、どうしても強がりにしか聞こえなかった。
「なんか、マッチ売りの少女みたいだ」
「マッチ売りの少女、ですか……」
そして少し困った顔をして言う。
「たしか、悲しい終わり方ですよね」
そうだ……マッチ売りの少女は、寒さのあまり、マッチをつけて、その向こうに暖炉や、ごちそうを見て、最後は、天国に行っちゃうんだっけ……。
まずいこと、言ったかな……。
「……じゃあ、アキトさん。これが終わったらアキトさんのおうちに行きますから、マッチの火、消さないようにしてくださいね」
ルリちゃんが頬を赤らめて微笑む。
僕はただ苦笑いをするしかなかった。