[注意]この小説は完全にフィクションです。実際に存在する人物や組織によぉく似ている人がいたとしても、それはたまたまそうなっただけですので、お間違いなきようお願いします。
text and edit by Naoto "N2" Naruse( n2cafe@s27.xrea.com )
2201年5月19日……。
赤地に黒の派手なポスターの前で、一人の初老のオトコが手を合わせていた。
不意に立ち上がる。
「……ユリカ、テンカワくんとうまくやっているかい……」
☆
コロニー「ワールドカップ」
戦艦”ダーウィン”の艦長・アオイジュンは、突如あらわれた正体不明機と交戦状態に入っていた。
交戦状態と言っても、敵ははっきりとした姿を見せず、まるで噂話のようにすうっと現れては消えていた。ナデシコを離れ、もともと持っていた素質を開花させ、今や第一人者と目される彼とてもほとほと手を焼いていた。
オペレータが叫ぶ。
「ハッキングを受けています!」
「コード『evolution turbo type D』に変更」
「はい!……ダメです、一部区画に侵入を許しました」
「あとで書き換えればいい。落ち着いて対処せよ……」
だが、その時、戦艦ダーウィンのコミュニケの窓が一斉に開いた。
「なにぃ……!」
”DECADE&XXX”
……その直後、コロニーは爆発した。艦橋の混乱を的確な指示で抑え込みながら、アオイジュンは撤退の指示を出す。
そして、一通りの指示を出し終えると、今一度シートに身を深くうずめ、つぶやいた。
「Thanks、Good−By」、と。
☆
ホシノルリは、試験艦ナデシコbで、コロニー「Rent」へ向かっていた。クルーは、高杉サブロウタとマキビハリ。高杉は元木連の兵士であったが、地球に来てからすっかりその文化にはまり、ことに自らのことを”マーク”と呼んでいる。
「艦長、こんなところに何があるってんですか。ロンドンとかLAとか、そっちの方が明るくていいと思うんスけど」
「でも、その前に、敵は必ずここに現れます」
「そんなもんスか?」
「ええ、テクノとレイヴは予言どおりきましたしね」
……その予言は的中し、まもなくコロニーは正体不明機の攻撃にさらされた。
コロニー中に、謎のキーワード"SKNAF"が浮遊する。
防衛のために駐留していたスバルリョーコと連絡をとり、コロニー内部へと進む正体不明機を追う。
そして、その光景に、一同は息をのむ。
劇場のようなステージ、そして、飛行機事故で死んだはずのミスマルユリカが、彼らが「終了」させたはずの遺跡に融合されていた。
そこに現れる、また別の敵。
スバルリョーコはその攻撃を受けたが、危機一髪というところに高杉が現れて彼女を救出する。
「地球(globe)へ帰ります、高杉さん」
リョーコは叫ぶ。
「一回サポートしただけで、また見殺しかよ!」
その言葉を敢えて無視し、ルリはコロニー「Rent」を後にした。
☆
「君たちには、コロニー『ヴェルディ』のサポートへ向かってもらう」
地球に帰ってくるなり、ルリには任務を与えられた。
即座にクルーをLAにある自宅へ召集する。
「極秘任務となると、ここは使えませんね……」
ぽつりとマキビハリが言う。
すると、ルリはちらっと彼を見た。
「ええ、もうハワイに新しい戦艦を用意しています」
「え、そんな話があったんですか?」
「それから、今から新しくクルーを集めている時間もありません、昔の仲間を使おうと思っています」
さりげない口調を、高杉が聞き逃さない。
「でも、探すのに時間が……」
「それは大丈夫です。……プロスさん、どうぞ」
すると、髭の男が入ってきて、一通りの実務的な話をし、そして言った。
「勢力を分け合ったあの方たちは去年ベストを出されたし、同期の方もブームになって復活されましたしね。まあ、ちょっとした同窓会のようなものです」
……かくして作戦が決まり、また、陽動として巡洋艦”アミーゴ”の出動を決め、ルリは東京・芝浦へと向かった。
☆
そこで、ルリは思いがけない人物と出会った。
死んだはずのテンカワアキトである。
「生きていたんですね、テンカワさん……」
「君の知っているテンカワアキトは、死んだ。彼の生きていた証、受け取って欲しい」
白い紙束を手渡す。
それは、テンカワ特製アンプラグド版”Get Wild”の楽譜だった。
「こんな……こんなもの、受け取れません。テンカワさん、かっこつけてます」
「違う、違うんだよ、ルリちゃん……」
ついっとバイザーを外すアキト。
だが、気勢を制するように、ルリは言った。
「テンカワさん、変わりました。サングラスをとるのは最後の手段って言っていたのに……」
「やつら(NHK)のせいで、とらざるを得なくてね。教育番組だったから……」
……5年ぶりの邂逅を果たした両者は、それぞれの思いを胸に、コロニー「ヴェルディ」へと向かった。
☆
コロニー「ヴェルディ」を二部落ちから救った戦艦”TKD”の直上に、新たな敵が出現する。
「艦長!」
「ルリちゃん!」
「先生!」
「……あの人に、任せます」
時を同じくして現れた正体不明機を駆るテンカワアキト。息詰まる攻防……とは無縁のステージで、明るいトークを駆使し、敵を殲滅する。
かくして、戦いは終わった。
……ユリカはゆっくりと目を開けた。
「あれ……みんな、老けたね」
まだ完全に覚醒しきれない目でユリカはルリに言う。
「5年も経ってますから」
「そっか……アキト、アキトはどこ……?」
その時、すでに、テンカワアキトは再び宇宙へと戻っていた。
ルリは静かに、そして、笑顔で言った。
「あの人は戻ってきます。戻ってこなければ、追い掛けるだけです。だって、あの人は……大事なパントマイマーですから」
……ギタリストだろう。