8/24 「劇場版ccさくら」の感想


*あらすじ*

"Arrow"のクロウカードを手に入れたその夜、さくらは夢を見る。水の中で、だれかが自分を呼んでいる夢を。

2学期の終業式、帰る途中TWIN BELLSに寄ったさくらは、くじで特賞・香港旅行を引き当てる。かくして、さくら、知代、桃矢、雪兎で香港へ旅行へゆく。はしゃぐさくら。だが、ケルベロスことケロちゃんは、なにか強い魔力を感じるのだった。そして、さくらがくじにあたったことにも疑問を抱く。物事に偶然はない、というクロウの持論をもとに。さくらは、その夜も不思議な夢をみる。

その懸念はバードストリートであらわれる。自分をおびき出すように監視している2羽の鳥に気づき、封印解除(レリーズ)して追うさくら。そして着いたのは、とある古井戸だった。そこで、例の夢……幻覚をみる。吸い寄せられるように井戸に導かれるさくら。そこに李小狼(しゃおらん)が現れ、ことなきを得る。

その夜は小狼の家に泊まることとなった一行。李家はクロウの血をひく導師の家系で、小狼の母・夜蘭もまた強い魔力をもっていた。その夜、ふたたび夢を見る。だが、その時は違った。腕に布がからみつき、強い力で引き寄せられる。さくらがそこで目覚めると、腕にはその痕がしっかり残っていた。夜蘭は言う。さくらにはこれから危機が訪れる。だが、それを解決するのは自分の力だ、と。

翌日、4人に小狼と苺鈴を加えた一行が香港観光を続ける。だが、再び例の2羽の鳥に気づくさくら。鳥の後を追っていくと、鳥は骨董品屋に飛び込んだ。おそるおそる中に入るさくらとケルベロス。店内には、封印の施された古い本があった。すると、魅入られたように、さくらがその封印をはがそうとする。そして、その後を追ってきた一行の前で、さくらは封印を解いてしまう。

一面の水の世界。そこには古風な衣装に身を包んだ女……魔導士がいた。クロウリードはどこだ、と問う魔導師。クロウを呼び寄せたはずが、クロウカードの持ち主を呼び寄せてしまったことに逆上した彼女は、さくらと小狼をのぞく4人を水球に封じ込め、そして、さくらたちをも封じ込めようと攻撃を始めた。辛うじて知代を助け出すも、小狼は魔導師の手に落ちてしまう。

ホテルにもどり、自らを責め、落胆するさくら。ケルベロスは、魔導師の正体を思い出す。それは、占いの客をとられたクロウに逆恨みをしていた女だった。その想いを本に託しているのだろう、と。そして、本の表紙に描かれていた絵、それはあの古井戸であった。みんなを助け出すために古井戸に向かうさくらたち。だが、結界が張られていて中に入れない。そこへ夜蘭が現れ、さくらのために結界を開いてくれる。

再び魔導師と対峙し、みんなを返してくれと懇願するさくら。だが、クロウを出せの一点張りの魔導師は、ついに古井戸を破って香港の空へ舞い上がる。水の弾をくりだして攻撃する魔導師。さくらには為すすべもなく、工事中のビルの屋上に追いつめられてしまう。

だが、その時、クロウに対する魔導師の真の気持ちを、さくらは知った。彼女も本当はクロウのことを……。そして、その気持ちを知ったさくらの、心からの説得に応じて、魔導師は元の世界に帰るのだった。


*感想*

まず、一言。「林原めぐみさん、凄い!」

魔導師役が林原さんなのですが、これが(いい意味で)ものすごい演技になっています。平素の抑えた声から逆上した時の声へのつながり、そして、クロウへの想いを”待っていたのに……”の一言で表現してしまうこの演技、これは聞かないと後悔します、絶対。また林原か……とパンフをみて思ってしまった私、猛省が必要です。すいません>林原めぐみさま。

さくらちゃんのこと。かわいい仕草・表情が多かったです。ほくほく。全面に、でも嫌みにならないように、フィーチャーされていましたので、これは見ないと。衣装替えも多く、コスプレーヤーもネタには困りません(笑)。劇中では杖を持っているシーンが多いのですが、片手で持ったりFlyのカードで飛んだ後で両手で持ちかえると、杖を持つ腕が”しな”をつくる感じになります。これはかわいいとは思う反面、ちょっと違和感を感じました。作画も一定していて、ずっとかわいいさくらが見られます。

音響効果。空を飛ぶシーンが多いのもさることながら、水の中のシーンが多いので、音響設備のしっかりした劇場を選ぶことをお勧めします。私の行った上野は、残念ながらの設備でしたので、実際はわからないのですが……。

映像については、奇抜な演出はなく好感がもてる反面、オーソドックスにつくりすぎたためか、やや飽きてしまいました。終盤の盛り上がりが一気に見せつける作りになっていたのに対し、中盤がバテバテなのは気になりました。しかし、これはあくまで好みの問題かと思います。残念だったのは、せっかく空を飛んでいるのに、飛翔感があまりなかったという点です。「魔女の宅急便」や、”電車に乗っている”感すら見せつけた「耳をすませば」を制作したジブリのように、とはいきませんが、せっかくの大画面ですし、もっと縦横無尽に動くさくらが見たかったです。

#これは私見ですが、さくらの衣装はスカートが多かったため、過度に動かすとパンツが見えてしまいます。ですが、パンツはできるだけ見せないようにという演出の指示が、逆方向にはたらいてしまったのかもしれません。これは、嫌と言うほど見せまくっていた(笑)「魔女の宅急便」と比較してみると、よくわかると思います。

設定については、敢えて目をつぶりましょう。本来、子供向けのアニメですから。

最後に。癒し、というのが現代社会のキーワードとなっている今日このごろ。過激さはもはや陳腐となる一方で、過激さに毛羽立ってしまった緊張をほぐしてくれるモノが求められていると言えます。その意味で、ccさくらは、安心して世界に没頭できる映画でした。特に派手な演出もなく、扇情的なシーンもありませんが、土台のしっかりしたスタッフの誠実さが感じ取れるような、そんなまっすぐな作りになっていると思います。時間がとれれば、また行きたいです。いい映画をみせていただいて、ありがとうございました>スタッフのみなさま。


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